細胞表現型に対する適応度地形と選択強度の定量評価

細胞表現型に対する適応度地形と選択強度の定量評価

近年の1細胞計測技術の進展により、1細胞レベルで起こる細胞表現型のばらつき・ゆらぎに関する高精度の定量情報が得られるようになってきました。一方で、観察された表現型ゆらぎが「意味のあるゆらぎ」なのかを知ることは一般的には難しい問題であり、分岐構造をもつ細胞系列上のダイナミクスデータから有用な情報を取り出すための新しい解析手法が必要になります。

我々はこのような解析手法の構築を行っています。具体的には、注目する表現型(例えば特定の遺伝子の細胞内での発現量など)の差に対して、適応度がどう変化するかという情報(「適応度地形(Fitness landscape)」)と、観察された表現型差と集団内で起こる自然選択がどれだけ強く相関しているかという情報(「選択強度(Selection strength)」)を、1細胞計測などの実験データから直接評価することを実現する解析手法を開発しました。現在、この解析手法を様々な実験データに適用することで、表現型ゆらぎの各現象での役割を考えるとともに、さらに、より一般的な状況で使える解析手法に拡張することを目指しています。

 

1細胞計測によって得られる細胞系統樹や発現推移ダイナミクスの例

細胞表現型に対する適応度地形と選択強度(Nozoe, et al., PLoS Genetics, 2017より)

 

See also:

  1. Nozoe T, Kussell E, Wakamoto Y (2017) Inferring fitness landscapes and selection on phenotypic states from single-cell genealogical data. PLoS Genet 13(3):e1006653.